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シンクスパイダー 真っ直ぐ落ちていく・2 [製品開発]

モッサがパラシュートドライフライであるならば、シンクスパイダーはソフトハックルのウェットフライやウーリーバガータイプのニンフフライです。

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ウェットフライはハックルが少なめに巻かれています。これを多く巻いてしまうと浮力が発生してしまい沈下の妨げになる。
そしてウェットフライはリトリーブして使うものです。だからハックルは少量を縦に巻く。リトリーブに伴ってハックル自体がフワフワ開閉して魚を誘う。
テールも重要なパーツ。これがあることで水平姿勢を維持できる。

以上が沈めて使うためのフライが持ち合わせているディティールです。

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シンクスパイダーは
・まばらに生えた脚
・多方向に生えた脚
・テールの役割を果たす後方の脚
・微細に動く長さ、細さ、形状を兼ね備えた脚

モッサとは一線を画すシンキングインセクトベイト専用のデザインディテールを纏っています。
そしてもちろん素材も違います。モッサは微細な泡を多く含んだフォームPVCという素材で、シンクスパイダーは高比重のソルトインマテリアル。

とても不思議なことですが、ドライフライが水を吸って浮かなくなってしまうと釣れなくなります。見た目は大してウェットフライと変わらないのにです。だからフライの世界では、ウェットフライの代わりにドライフライで代用しようなんて人はいない。それぞれ専用のものを使う、それが最良というわけです。シンキングインセクトベイトに関しても、沈めて使うためのディティールがあってこそ最大限の効果を発揮できるものと考えています。

フローティングインセクトベイトとシンキングインセクトベイト。もし純粋に「虫」を意識して使うのだったら浮く方が断然いいです。その理由は水面に「置きっぱなし」に出来るから。
ここぞという場所があったらそれこそ提灯釣りでひたすらチョンチョンしてもいい。魚を寄せて喰わせることが出来るし、魚をじらしてバイトに持ち込むことも出来る。

一方、シンキングインセクトベイトは一点で誘いをかけることは苦手です。水面でチョンチョンやるのだったら浮く方が使いやすいですし。
では、フローティングでは出来なくてシンキングに出来ることとは何か?それはワーム自らバスの近くに向かっていけることです。だからこそ、ここぞという場所に撃ち込む際に重宝される。サイトフィッシングなどで多用される所以です。

流行っているから沈む虫、ではなく、それぞれに有効なシチュエーションを理解して使い分けることで武器になります。見た目が同じような感じだったとしてもフローティングとシンキングでは全く用途が違うルアーと認識した方が正しいかもしれません。

(つづく)

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シンクスパイダー 真っ直ぐ落ちていく [製品開発]

カタチあるものには全て理由があります。それを無視してデザインしても本来の機能は得られない。

おかげさまで人気を博しているパフォーマンスベイト・モッサ

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これは水面に水平に浮かせることを念頭にデザインしています。フライで言うところのパラシュートドライフライです。フックシャンクと平行に、そして高密度でハックルが巻かれていますよね。フックシャンクと平行にハックルが巻かれていることにより水面には水平姿勢で浮きます。ハックルが高密度で巻かれているのは表面張力を高めて浮力を稼ぐため。

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モッサに生えている14本の脚はまさしくパラシュートフライのハックルに相当するものです。これが表面張力を生んでいます。

ただ、ドライフライは基本的には放置して使うものです。とにかく自然に流すことが一番重要で、釣り人側が動きを付けるようなことはしない。バス用のインセクトベイトはその点が違います。こちらはある程度釣り人が動かして使うものですから。

しかしながら私の意に反して、モッサを沈めて使うという人が出てきました。わざわざネイルシンカーを刺して使うという人もいる。確かに、それでも釣れてしまうのは事実です。

そしてそんな人達からは、シンキング版のモッサを作って欲しいという要望が上がり始めました。
実は私の手元にはシンキングモッサがあります。何を思ったか工場が誤って塩入りの素材で試作してきたもの。試しに使ってもらった人によると良く釣れるらしい。でも自分はそれは作らないと決めていました。
モッサはあくまで浮かべて使うための設計です。これを無理矢理沈めて使っても釣れてはしまうけれど、少なくともデザインに合致した使い方ではありませんのでデザイナーとしてはお勧めできない。

それに、沈めて使うのだったらそれに適したカタチのものがあればもっと使い勝手が向上すると思っていました。

2020年に発売となるパフォーマンスベイト・シンクスパイダーは沈めて使うことを前提にデザインしたものです。本来浮かせて使うためのものを無理矢理沈めて使うよりも、その扱いやすさは段違いと自負しています。

(つづく)

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クローンクローと熟女の香り [製品開発]

基本的に自分の仕事は社内の「何でも屋」なのですが(汗)本業は一応製品開発です。

通常製品開発というと全く新しいものを作り出すことを指します。ですがスミスの場合は海外ブランド製品の復刻という仕事もあり、これはいかに過去の製品に近づけられるかが求められることもあります。で、昨年から自分の仕事になっているのが「ワームの復刻」なのです。

ご存知の通りOFTさんがなくなってしまい、その販売を引き継いだものが幾つかあります。でもその引継ぎというのも簡単なことではありません。製品、パッケージ袋、トレー、シール、パッケージ内職。OFTさんで使っていたそれぞれの業者さんがそのまま稼動してくれればいいですが、既に会社がなくなっていたり、或いは価格や生産数が見合わなかったり。そうしたらまた新しい業者さんを探さなくてはならない。パッケージデザインなどは当然新たにやり直しです。メーカー名を変えなくてはいけませんから。

ワーム自体もそうです。中には既に生産が出来ないものもありました。

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当初、クローンクローはスミスでも取り扱わない方針でしたが、あまりにも要望があちこちから聞かれたため急遽取り扱うことが決定。ですが元々のクローンクローは既に生産出来ない状況になっていました。
そもそも、現物を見てみたら成型精度にもだいぶ難がありました。おそらく金型がもう寿命だったのでしょう。細部の造りがもうグズグズでした。そして当然の事ながら図面なんて残っていなかった。

そこでクローンクローは新たに設計をし直しました。ハサミにあるブツブツもきっちり再生させました。

既存品の復刻というのは、新規開発とはまた違った難しさがあります。あくまで忠実にが基本です(でもこれって、ニセモノを開発しているのと同じことなんですよねぇ)。クローンクローに関しては元OFT社スタッフのSさんにもチェックしてもらい、良い物に仕上がっている自信はあります。

ですが、オリジナルのクローンクローはかなり昔に作られたワームです。それに比べ、現代のロックフィッシュ用のワームというのは集魚剤をたんまりと混ぜ込んであり、味や臭いという面では昔のマテリアルでは太刀打ちできないのも事実です。こればかりは従来品を踏襲する必要はありません。

ですから、この点だけは釣果で負けないように集魚剤をしっかりとマテリアルに混ぜ込みました。そして周りの人に臭いを嗅がせてみたところ、皆口を揃えて「くっさ~」と言いながら顔をしかめます。うむ、それでいい。臭いワームほど釣れるのだから。

それにしてもこの臭い、ガルプとも違うし根魚大将ともまた違う。果たして、この臭いをどうやって説明したら良いものか・・・

そうしたらある人が臭いを嗅ぐなりこう言った。
「この臭い・・・熟女の股間の臭いだっ!!」
いや、熟女でも人それぞれだと思うんですけど、もしクローンクローを購入された方は臭いも嗅いでみて下さい。

01.レッドクロー
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これはOFTさんで販売していた時代の一番人気。まさしくザリカラーですね。甲殻類を模したラミネートカラーといえばコレです。

02.グロー
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これもOFTさんで販売していた時のカラーを継承。カサゴやクロソイの夜釣りには必携。

03.レッドゴールドフレーク
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根魚にはやっぱり赤系が人気。ちなみに狂輪波でも赤系(レッド レッドフレーク)が一番人気でした。

04.オレンジゴールドフレーク
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オーシャンパフォーマーの人気カラーを転用しました。ロックフィッシュ系にもチヌにも効くアピールカラーです。

05.ブラック
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OFTさんで販売していた時のカラーを継承。一部では根強い支持があるみたいです。

06.グリパン/オレンジ
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オーシャンパフォーマーの人気カラーを転用しました。背中側はナチュラルカラー、腹部はアピールカラーを組み合わせたもの。ズル引きではナチュラルな存在で、リフト&フォールをすれば腹が翻ってアピールもするという特性を持っています。

07.イワガニ
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オーシャンパフォーマー黒鯛大将の人気カラーを転用しました。バス的に言うとジューンバグカラーです。

08.エビミソゴールド
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チヌ専用ワーム「アマジャコ」の人気カラーを採用しました。地味なカラーではないと思うのだけれども、水中に入れると不思議と馴染む色。

・10本入り
・¥400+税

・7月発売予定

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コロっと、コロット。4 [製品開発]

通常、ルアーの開発を進めるにあたってはフィールドテスターの方々に意見を聞いたり、協力を仰ぐのが通例です。私自身もそれを一番重視しているのは間違いありません。

なお、現在スミスのバス関係のフィールドテスターに関してはJB,NBC,WBSといったトーナメンターの人にお願いしています。
トーナメンターは道具を見る目が一般の方よりもシビアです。それが自身の成績にも関係してくるのですから当たり前ですね。何より、ハイレベルなアングラーの集団の中に身を置いているわけなので周りから見聞きする情報も洗練されている。だから、より突き詰めた意見をもらえる。

ただ、コロットSRに関してはトーナメンターの人達の意見はほぼ伺っていません。方向性が違うと思ったからです。

日本のトーナメントではハイプレッシャーの状況下で結果を残す必要があります。シャロークランクにしてもハイアピール系のものが不利になることが少なくない。日本ではバルサ製のハイアピールクランクがウイニングルアーになりにくいというのも、その辺りに理由があります。

にも関わらず市場においてはバルサ製クランクも高い需要があるわけです。それは一体なぜでしょうか。理由は簡単、一般アングラーはそれでちゃんと釣っているからなのです。
ある意味、トーナメントというのは特殊な状況下での釣りです。ほとんどの場合ハイプレッシャーで釣れない中での釣りになる。トーナメントレイク自体もポテンシャルが低下している場合が多い。
一方、一般アングラーは少しでも多く釣りたいと考える人が多いはずです。となると必然的に、釣れる確率がより高いと思えるフィールドで釣りをする。

トーナメンターと一般アングラーではルアーに求める要素が違うということです。その目的が「釣るため」で共通しているにも関わらず、です。

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コロットSRでは一般アングラー目線で釣れるシャロークランクを目指しました。レスポンスの良いワイドウォッブル。泳ぎや波動は強い部類のシャロークランクです。

潜行深度は、計測値としてはMAX1mを記録しましたが実用範囲としては60cm程度までのシャローレンジが活躍の場となります。ロッドを立ててゆっくり引けばウェイクベイトにもなる。もちろんミディアムリトリーブでガンガン引きまくるのも良いです。
外観的な可愛らしさは仮の姿、実際のところ、容赦なくバスを狩る漁具として開発を進めていきました。

マッディーシャローのバンク沿いをアップテンポに攻めていく。
水深の浅い皿池で、遠投して広い範囲で探ってみる。
リザーバーのティンバーエリアに投げ込んで、枝にぶつけながら上層を引いてくる。
消波ブロックに当てながら、その隙間を通してくる。

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コロットSRはそんな状況下ではきっと効きます。そして時にはバスが翻ってアタックしてくる様子が目に入ってくるかもしれません。

是非、コロットSRでエキサイティングなシャロークランキングを楽しんでみて下さい!!

(おわり)

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コロっと、コロット。3 [製品開発]

50mm弱のサイズで丸い形状のクランク。これだけ聞くとコンパクトなクランクベイトを想像する人が多い事と思います。

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ですが、写真上の荒削りした状態でのバルサ片も全長50mmです。50mmというサイズ制限内であってもこれだけボリュームのあるデザインにすることも一応は出来るのです。
まぁ、これは浮力が高過ぎて潜らせることが出来ませんので実用的ではありませんが。

50mm弱のサイズで丸っこい形状のシャロークランク。ありがちなスペックなようでいて、実はこれほど設計が難しいルアーもありません。何も考えずにルアーを作ると、必ずある壁にブチ当たる。

まず、横幅のあるルアーというのは魚が横方向からアタックしてきた際に弾いてしまうケースが少なくないのです。カバーに対するスナッグレス性能に秀でている反面、魚も掛かりにくくなってしまうというわけです。フックサイズに関して具体的に記すと、#8では駄目で#6を使わなくてはいけない。

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ところが、50mmという範囲内に#6フックを前後に装着するとフック同士が絡まるという事象が発生する。つまりは間隔が足りないのです。

この問題、どう改善したらいい?間隔を確保するためにルアーの全長を伸ばす?或いは#8フックでもフッキング率を高めるためにボディーを薄くする?・・・ね、既にこの時点で「50mm弱で丸い」という根幹の部分を崩さざるを得ないわけです。

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コロットSRの場合は特殊なパーツを使うことでこの問題を解消させました。腹部・後部に横向きのエイトカンを採用しました。こうすることで前後への移動幅を抑え、フックの絡みを防止しています。

小さくて丸い。それを具現化するのは一筋縄では行かなかったという事です。

(つづく)

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コロっと、コロット。2 [製品開発]

プラグの分類というのはおおよそその形状で判別されます。シャッドは薄いカタチ、ミノーは細長いカタチ。じゃあクランクベイトは?というと、丸っこいカタチというイメージを持つ人が多い事でしょう。

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でも、本当の意味で丸っこいクランクベイトというのは少ない。どれもこれも、意外と横幅があるとは言えないものが多い。ファッツオーやファットラップに匹敵するような横幅を持つクランクベイトというのは案外少ないのです。
コロットSRは、最も投げやすい3/8oz前後のウェイトを出来るだけコンパクトにまとめたいと考えていました。そうなると、おのずと"小さくて丸い”というパッケージングを意識しながらデザインを進めていきました。

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形状を球に近付ける。これは私がデザインしたスピナーベイト「ビバーチェ」のヘッドデザインでも強く意識した部分です。

質量をとにかくコンパクトにまとめていこうとするとおのずとその形状は球に近付いていきます。だから球に近ければ近いほど、真っ直ぐに投げやすいものが出来上がる。特にショート~ミドルディスタンスでのアキュラシーキャストを気持ちよく決めていくことが出来る。

そしてクランクベイトの場合は、横幅があることによってベリー部のフックが本体にガードされるかたちとなりスナッグレス性能が上がる、容積の拡大によって高い浮力が得られる、といったメリットが生まれます。

反面、形状を球に近付けることによるデメリットも勿論あります。コロットSRでの開発作業の多くは、そうしたデメリットをどれだけ潰していけるかという作業だったように思います。

(つづく)

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コロっと、コロット。 [製品開発]

もしかすると自分は人よりもルアーを多く所有しているのかもしれない。特に古い海外製品はそれなりに持っている。ですが自分はルアーのコレクターではありません。市場価値的なものにはあまり興味がない。

自分の仕事はルアーの開発業務です。所有しているルアーの多くは「泳ぎのサンプル」として所有しているものが多い。プラグも、ワームもです。
あのルアーは確かこんな泳ぎをしたはずだ。そう記憶していたとしても現物が手元に無ければ確認できない。こういう形状をしているものはこんな動きをする。その現物が手元にある。実際の泳ぎを確認できる。
それが自分にとっては何より大事な事なのです。ルアーの開発で行き詰った時、その答えの多くは手持ちのオールドルアーが教えてくれた。

自分がここ数年で最も傾倒してきた形状がヒップアップシェイプのルアーです。そもそものきっかけというのは、テールが下方向を向いていないルアーの特性に着目したところが始まりでした。

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一番最初に着目したのはボーマーのスマイリンミノー。このルアーはあえて分類するとミディアムディープのシャッドになるでしょうか。そしてスマイリンミノーはロールを一切しない。リップ形状にも一因があるかと思いますが、形状の割にはスタックしにくい。これはなかなか面白い特性だと思った。だから自分はこの特性をシャロークランクに組み込みたいと考えていました。

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さらにその後、すっかりその存在を忘れていたのですがアーボガストのパグノーズを思い出しました。これをまた改めてスイムチェックしてみると、やはり期待通りの性能を持っていた。但しアクションレスポンスとしてはスマイリンミノーもパグノーズも今の時代には物足りないものです。現代の製造技術であればもっと良い物が造れるはず。

テールを下方向に向けないことで意図的にロールを抑える。この特性を生かしたシャロークランクを作ったら何か面白いものが出来るかもしれない。そう思い、何個もバルサを削ってはルアーを作り続けてきました。
そしてその特性をさらに明確にするべく、単にテールが下方向を向かないだけではなくヒップアップ形状へと進化した。そしてそれらは当初はあくまで自分用として製作していたものでした。

そしてその中の最終形態をABSで量産品に転化させたものがコロットSRです。

(つづく)

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KURU・RIN・PA!5 [製品開発]

現在、ロックフィッシュ用で多用されるリングリブワームの多くはカーリーテールタイプのものです。狂輪波もまた然り。但し狂輪波では根魚大将同様にテール形状にも特性を持たせてあります。

バス用のワームにおいては(全てのワームに当てはまることではありませんが)、「動きの良さを出すための薄めのテール、柔らかい素材」が好まれる傾向にあります。
これに対してソルト用のワームにおいては「耐久性」が求められるケースもあります。特にタチウオ用のワインド用ワームなどはそれが顕著です。ロックフィッシュでも磯やボートロックなど、プレッシャーが低く魚自体も多いケースでは耐久性重視のワームの方がリズムが崩れず釣りやすいのは確かです。そうした状況下では多少硬いワームでも魚は釣れますから問題とならないのです。

しかしながら、近年はソルトの世界でもロックフィッシュトーナメントが定着したり、近郊フィールドのプレッシャーが高まるに従い、耐久性よりも喰いの良さが重視されるケースが多くなってきました。私自身も現場で実際に比較テストをしてみて、釣れるワームとそうでないワームの差が顕著に出ることを痛感していました。

但し、アイナメは特にそう思いましたがパーツが齧られて取られてしまいやすい。バイトが出るたびにパーツが1本2本と取られて行き、しまいにはイモのようになってしまったり(苦笑)。こうした状況下では薄いカーリーテールというのは頻繁に千切られてしまう。

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狂輪波ではカーリーテールの肉厚を1.5mmで設計しています。バス用の同サイズと較べて若干肉厚になっています。但しそれによって動きのレスポンスがスポイルされることがないように、根魚大将と同様テールの先端を円形として水の掴みを向上させています。これによって1/8ozのシンカーでもしっかりと泳ぎます。
その反面、テールの薄さで動きを出しているわけではないので1/2ozのシンカーでもテールの動きが潰れません。薄すぎると直線状になってしまいます。



こちらの動画では1/4ozのタングステンバレットシンカーを使用しています。

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狂輪波の「波」は波動です。リングリブが生み出す水押しの強さと共にカーリーテール自体が水を掴んで力強くはためく泳ぎによって波動を強く生み出しています。

奇をてらっていくジャンルではないと考えていますので必要以上のアクセントを持たせることは避けましたが、後発であるだけにより進化させたリングリブワームには仕上がった自信があります。

ふざけたようなネーミングが印象強く残ってしまうワームですが(それも狙いですが)製品としてはかなり真剣に製品化に取り組んだことがお判りいただければと思います。

5月の発売以降、あちこちから聞こえてくるであろう狂輪波の釣果報告が今から楽しみでなりません。

(おわり)

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KURU・RIN・PA!4 [製品開発]

ワームにフックを刺す。ただそれだけのことと軽視してはいけない部分です。何故ならワームが曲がってしまったらそれだけで劇的に釣れなくなる。フックは必ずワームが真っ直ぐになるように刺す。それが基本。

だからある程度のレベルのアングラーならば、フックはここから刺して、この位置から抜いて、この辺りから刺し直して、ということが分かっているはずです。

現在オフセットフックの主流となっているのは"針先を一旦出して皮一枚に刺す"スキンセットタイプのフックです。昔はこんなフックは無かった。
このフックのルーツというのは、往年のJBTAで活躍されていた反町裕之プロがオフセットフックの針先をペンチで内側に曲げてスキンセットをしていたものが始まりです。そしてそれを量産品として進化させたものが、河辺裕和プロがデザインした"スゴイフック"です。現在では多種多様なスキンセットタイプのオフセットフックが発売されています。

では、スキンセットタイプのフックをリングリブタイプのワームにセットしてみましょう。さあ、フックの針先はどうなっていますか?
  • リングリブには刺さっていない
  • リングリブに軽く刺さっている
  • リングリブを貫通して針先が出ている
  • リングリブを貫通して、その先のリングリブに刺さっている
  • 複数のリングリブを貫通しているが針先は刺さっていない
  • 複数のリングリブを貫通しており針先もリブに刺さっている

ワームをフックに綺麗に刺せるアングラーだったとしても、リングリブへの針先の干渉具合までは意図的には調整できない。限度がある。ワームによってリングリブの間隔やリブの厚みも異なるのですから。とはいえ、別にそこまで気にしていないという人が多いのではないでしょうか。

でも、スッポ抜けた時によくワームを見て欲しい。針先が複数のリングリブをガッツリと貫通している場合、フックがズレていないことがあることに気付く。フッキングを阻害しているケースが考えられるということです。

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狂輪波ではフックの収まりが良いように背中側にスリットを設けてあります。加えて、スリット部分のリングリブは切り欠きとなっている。これによってオフセットフックの針先がリングリブに干渉することはない。

人によっては意図的にリングリブを利用してオフセットフックの針先を固定しているケースも見られます。ただ、その場合もリングリブへの干渉度合までは調整できず、その場その場でセットしているに過ぎないはずです。けれどもそれではフッキング率にバラツキが生じる。だから狂輪波ではスリット部分からリングリブを無くしました。

あまり目立たない、ちょっとした工夫。それで劇的に結果が変わるとまでは感じられないことと思います。でもそうしたちょっとした工夫の数々、僅かではあっても精度の向上を積み上げていくことで製品の完成度は増していく。いつもそんなことを考えながら製品のデザインを進めています。

(つづく)

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KURU・RIN・PA!3 [製品開発]

リングリブタイプのワームを使っていて何か不満があるか?どこをどう改良したらいいと思うか?リングリブタイプのワームを開発するにあたり、こうした質問をロックフィッシュのエキスパートアングラー数名に行っていました。

私自身も同じ見解を持ってはいたのでおおよそ予想はしていたのですが、こんな回答が得られた。
「ボディー軸が細いのでフックの保持力が弱い。簡単に『く』の字に曲がってしまう。特にヘビーシンカーでハードに使うような状況下ではとてもストレスに感じる」

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あぁ~、それは確かに細いワームや薄いワームにあるあるですね。特にワームをしばらく使って、グズグズ感が出てきた時には顕著です。

ですがこれの改善は至って簡単です。ボディー軸を太くするか、素材を硬くすればいい。ただ、後者はワームの動きや喰いの良さという面でデメリットが出るので、対処するとしたら前者の方法です。

ですがそもそもリングリブのワームが持つ独特の水押しというものはリブが深ければ深いほど発生する。だからボディー軸を太くすることでリブが浅くなり過ぎてしまったら、そもそものリングリブワームとしての効果が相殺されてしまう。かといってリングリブもボディー軸も全体を大きくするとなるとボリュームが出過ぎてしまう。

要はそのバランスをどのレベルに設定するか、ということです。

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狂輪波ではボディー軸をやや太く設定しました。その分若干リングリブは浅くなっていますが、この程度のリブの深さがあればリングリブワームとしての効果は確保できるとの判断です。

ですので、開発者である私が言うのも何ですが、狂輪波がリングリブワームの中で最も優れた製品ですなんて言うつもりはさらさらない。時にはフックのズレにはある程度目をつぶってでも、ボディー軸の細い(=リングリブが深い)ワームを選ぶべき場面はあるだろうと思います。消耗は激しくなりますが、少しでもズレやすくなったと感じたらどんどん新しいワームに交換して行く事である程度は防げますしね。

でも、自身もテストをしてみてこれははっきりと言える。狂輪波はストレスなく扱える。これはもちろんヘビーウェイトシンカーでフルキャストしてもフックがズレにくく、いちいち投げ直す必要が無くなるから。魚がミスバイトした際にもズレにくいので追い喰いバイトが期待できる。限度はありますが魚を何尾か釣ってもまだ使える。少なくとも、リングリブワームの中でワーム1本当りで魚を何匹釣れるかという比較をすれば、狂輪波はかなり上位であるのは間違いないです。

まぁ、メーカーとしてはワームをどんどん消費してもらった方がありがたいのですが(苦笑)過度の消費を推奨するというのもどうかと思うし、私の場合は釣り人目線で製品開発をしているので、ストレスなく扱える方が釣り自体に集中出来て好ましいと考えているのです。
すぐにフックがズレてしまう、ワームが曲がってしまう、そんなことを気にせずフルキャスト出来るワームの方が自分はいいなと、そういう事です。

(つづく)

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