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パイオニアの理想形・4 [製品開発]

ようやくグルーパーバグがスミスに入荷し、デリバリーがスタートしました。やっと入った・・・というのが正直な思いです。

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グルーパーバグは2022年のカタログに新製品として掲載されています。元々は昨年の5月に新製品として発売されるものだったのです。とうの昔に開発自体は終了し、時間に余裕をもって工場に生産指示を出していました。それが、ただでさえコロナ禍による都市のロックダウンといった影響で中国では物流や人的移動が制限される中、生産ラインがメチャクチャな状態になってしまいました(それ以外の要因も色々ありましたが)。

グルーパーバグは物凄く複雑な形状・構造をしています。これを製造できる工場というのは限られている。だからこそ、パフォーマンスベイトやオーシャンパフォーマーと同一の生産工場に製造を依頼しました。技術的には間違いなくこの工場がトップクラスだから。ただ今回ばかりは、それが裏目に出た面もあります。

「まだ発売されないんですか?」「いつ発売されるんですか?」辻本さんも、自分も、スミスの営業員も随分と聞かれたはずです。でも、自分も一体いつになったら出来上がってくるのかわからなかった。工場がほとんど音信不通になってしまっていたからです。関係者が日本から中国に出向いて直接確認してくることも出来なかった。完全にお手上げ状態でした。

最悪、グルーパーバグは生産を断念しなくてはいけないかもしれない。全く別の工場を探して、0から再開発をすることも考えました。もしそれをやっていたら発売はさらに1年伸びていただろうと思います。辻本さんにも逐一それらの状況を説明していました。歯痒い思いをさせてしまっただろうと思っています。グルーパーバグに関しては、つい2ヶ月前までそんな状況だったのです。

それが何の前触れもなく、唐突に工場から連絡が入ってきました。
「グルーパーバグ、出来ましたよ~」

思わず「エーッ!」と声を上げてしまいました。まさかの知らせでした。そして良い知らせだけどいきなり過ぎる!!生産が進んでいるのならもっと早く言ってよ・・・

それからがもう大変。プロモーションも、受注も全て止めていましたから。もしかしたら製品化出来ないかもしれないものに、宣伝や受注をするわけにはいきませんから。釣りフェスティバルやフィッシングショーOSAKAでグルーパーバグの展示を控えていたのもそのため。
それがいきなり製品が入荷してくることになったので、慌ててプロモーションや受注を進めることになったというわけです。

グルーパーバグは私が辻本さんにお願いして、デザインを興してもらったものです。試作やテストもほぼ全て丸投げして、かなりの時間と労力を費やしてもらいました。それらが全て無駄に終わってしまうかもしれないと思うと、本当に申し訳ない気持ちで一杯になりました。ですので無事に製品が発売されたことに心からホッとしています。

グルーパーゲームという言葉は、辻本さんがハタ釣りを普及させていくのにあたり、ルアーマンに受け入れられやすい名称をということで名付けたものなのだそうです。そんなこともあり、この製品にはどうしても「グルーパー~」という製品名を付けたいと言われていました。そんな経緯で名付けられたのがグルーパーバグという製品名です。

ようやく発売に漕ぎつけて私も肩の荷が降りました。もうすぐハタも良く釣れるシーズンに突入します。きっとグルーパーバグでの好釣果があちこちから聞こえてくることでしょう。

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パイオニアの理想形・3 [製品開発]

私自身が手掛けたロックフィッシュ用のソフトベイト『オーシャンパフォーマー』シリーズは東北地方のロックフィッシュゲームを想定してスタートさせたもので、結果的にソイ類やアイナメを意識してカラーラインナップを構成していったという経緯があります(のちに、ハタ類を狙うアングラーの意見も取り入れていきました)。

近年は日本の各所でグルーパーゲームも盛んになりましたが、一口にハタといってもキジハタ、オオモンハタ、アカハタ、マハタ、アオハタ、ヤミハタ・・・と色々です。さらにデイゲームで狙う場合とナイトゲームで狙う場合があります。そして地域によっても支持されているカラーに差異があり、私としてもカラー展開には頭を悩ませることが多かったです。

一方、辻本さんが手掛けるグルーパー専用ワームに関してはそのカラーラインナップも全て辻本さんにお任せすることにしました。辻本さんが想定しているターゲットはメインにキジハタ、そしてアカハタ。OFT社時代から辻本さんとの繋がりがあるS内さん曰く、辻本さんはグリーン系好きですよ、との話も聞いていました。そういえばオーシャンパフォーマーにグリーン系カラーを加えて欲しいとのリクエストをいただいたこともありました。

さて、辻本さんはどのようなカラーラインナップを提案してくるのだろう?楽しみでもありました。

そして辻本さんからのカラーリクエストが届きました。周囲のアングラーの意見も聞き、とても悩んだそうですが、最終的には辻本さん自身が「これは良く釣れる」と感じているカラーを厳選してきたようです。より具体的に記すと「日本海側のデイゲームでよく釣れる色」と「瀬戸内のナイトゲームでよく釣れる色」を基に構成されているそうです。

ここでは最終的に採用されたカラーに関して説明を加えます。

01.ウォーターメロンペッパー
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バスアングラーである私はナチュラルカラーの筆頭だと考えてしまいますが、瀬戸内のナイトゲームでの高実績カラーとのことでした。

02.グリーンスパークル
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実はこのカラーの試作に関しては、当初パンプキン/グリーンフレークを作るはずでした。それが試作の過程で緑味が強いカラーが出来てしまった。それを見た辻本さんが気に入り急遽路線変更してこれを正規採用したという経緯があります。外海のデイゲーム向きとの事です。

03.スモーク・レッドフレーク
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バスアングラーの私に言わせると「昔に流行った色」という印象です。今時の色ではない気がしてしまいますが、OFTで販売していた「キラーシャッド」での実績カラーなのだそう。瀬戸内のナイトゲームで効くカラーとのことです。

04.クリアー・レッドフレーク
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スクリューテールグラブの同色をそのままラインナップして下さい!との辻本さんの要望でラインナップに組まれています。やはりロックフィッシュにとって赤という色は特別なものであるらしい。

05.ピンキーオレンジ
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ロックフィッシュ用のワームで「オレンジ」「ピンク」いずれも支持があるカラーではありますが、これはその両方の要素を併せ持ったカラー。実はワームの工場というのは発色の得手不得手があり、こちらが意図したオレンジやピンクを上手く表現できない工場もあります。このカラーは、そんなボツカラーの中から辻本さんが「これは良い!」とのことでチョイスしたもの。

06.ブラウンシュリンプ
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辻本さんがスミスに移籍してきた際、あまり信用せず根魚大将のブラウンシュリンプを使ってみたらその釣れ具合に驚いたのだそう。オーシャンパフォーマーのブラウンシュリンプをグルーパー用ワームにも入れて欲しいという事で、カラーラインナップに組んでいます。これは絶対に外さないで下さい!と言われたカラーです。

07.ホログラムスパークル
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艶魚にラインナップしているカラーですが、辻本さんのお気に入りなのだそう。外海デイゲームでの実績カラーとのこと。

08.スキンピンクホロ
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オーシャンパフォーマーシリーズにラインナップしているカラーの転用です。こちらも外海デイゲームでの高実績カラーだそうです。確かにこの色、元々そのような用途でオーシャンパフォーマーにも入れたという経緯がありました。

51.FTシュリンプ
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正直、えぇ~!と思いました。自分にはとてもソルト向きのカラーとは思えなかったのです。実際、カラー見本として辻本さんが見せてくれたのはYUMのバス用のワームのファイヤータイガーカラーでした。ラインナップ中で最もハイアピール性を持たせたカラーです。

52.モルトシュリンプR
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OFTで販売していた「ロッキンホッグ」からの転用カラー・・・のはずでした。しかし、試作に際し私がミスを犯しました。ロッキンホッグのモルトシュリンプカラーは背中がブルーパールで腹側がスモークペッパーなのですが、うっかりこれを逆にして試作をしてしまった!ラミネートカラーは腹側がパール系、という思い込みが生んでしまったミスでした。
辻本さんに謝り、再試作を進めようとしたらストップを掛けられました。こっちの方が理に適っているのでこれにしましょう!とのことでした。RはReverse(反転)の頭文字です。オリジナルのモルトシュリンプを反転させているので、モルトシュリンプRというわけです。瀬戸内のナイトゲーム向けとの事です。

ナイトゲームというとグロー系もしくはハイアピールカラーを多用するのかと思いきや、薄めのナチュラルカラーを用いるケースもあるようで驚きました。やはり実際にその釣りをやり込んでいる人に決めてもらうのが一番ですね。

(つづく)

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パイオニアの理想形・2 [製品開発]

辻本さんから届いたデザイン案を見た自分は思わず絶句しました。

形状と構造があまりにも複雑過ぎる!普通の生産工場では即答で断られるレベルです。しかも、左右のアームとボディー内にエアーホールを設けるようにとされている。これを成型するための金型の構造が想像できない・・・。

この時点で「さすがにこれは無理です」と回答しても良かったかと思います。ただ、リクエストを出したのは自分側なので、無下に却下なんて出来ない(汗)。

開発依頼をぶつけようとしている工場は、これまでバス用のワームでも比較的複雑な形状をこなしてきた高い技術力のある生産工場なので、10中8、9駄目だろうけども駄目元で試作を依頼してみることにしました。

その試作にあたり図面を製作しましたが、通常のワームの5倍の手間と時間が掛かりました(汗)。自信の開発経験の中でも間違いなく過去イチ複雑な図面となりました。でも、これだけ苦労して図面を描いたけれど、きっと工場に断られてボツになるんだろうな。

却下はしなかったものの、辻本さんには次のように伝えていました。「一応は試作依頼を出してみますが、形状と構造が複雑すぎるのでおそらく試作も出来ないと思います」と。

ところがその後工場からの連絡が来ませんでした。図面を確認したらすぐに「出来ません」と言ってきそうなものなのに。

そして数ヶ月後のこと。私の元に荷物が届きました。これ、何だっけ?と思いながら開封してみると、何とあの超絶複雑構造のワームのサンプルが入っているではありませんか!

よく成型出来たなぁコレ。ただただ感心することしきり。金型代や製品単価はその分高そうだけど(汗)
でも、まさかカタチに出来るなんて思わなかった。改めてこの生産工場の技術力に驚いた出来事でした。辻本さんも、私から散々「断られる可能性大」と言われ続けてきたので、実物のサンプルが出来上がったことは大いに喜んでくれました。

但しこれはあくまで1st.サンプルに過ぎません。確かに図面通りに出来上がってはいましたが、実際に辻本さんにフィールドテストをしてもらい、何箇所かの修正を繰り返す必要がありました。具体的にはフックを刺している部分の直径、リブの位置、エアーホールの大きさ、空気孔の位置、カーリーテールの形状修正等々。
このうちの何点かは図面作成段階で不具合が出ることを予想していたのですが、最初から自分が色々と口出しをしてしまうとどんどん自分寄りのデザインになっていってしまうので、最初はあえて何も言わず進めさせていただきました。カーリーテールの形状がどことなく根魚大将っぽいのは少し私のデザインテイストが入っていますね。

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少し時間が掛かりましたが、ようやく完成形を見ることになりました。自分で使い込むとあれこれ口出ししたくなってしまうもので、あえてフィールドテストは全て辻本さんにお任せしました。

(つづく)

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パイオニアの理想形 [製品開発]

仕事柄、その道のエキスパートと一緒にタックルの開発を進めることがあります。ある意味かなり役得と言っていいでしょう。勉強になることも非常に多い。

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辻本ナツ雄(通称ポッキン)さん。言わずと知れたハタゲームやメバルゲームの大ベテラン。メディアで目にする機会も多かったですから自分もかねてより存じ上げていました。ちなみにハタ釣りを普及させようとした際に「グルーパーゲーム」と称するようにしたのは辻本さんのアイデアなのだそうで、その点においてもまさしくグルーパーゲームのパイオニアと称して差し支えないと思います。

自分が辻本ナツ雄というアングラーに対して抱いていた印象はというと、様々なリグを駆使する「リグ職人」ということと、与えられたモノを自分の持ち駒にしてしまうスキルの高さです。具体的に言うと、レーベルのクローフィッシュプラグを駆使してチヌを釣ったり、ヤムのクリーチャー系ワーム(もちろんバス用)でハタを釣ったり、というところです。何でも器用に使いこなして自分の武器に出来てしまう、スキルの高いアングラーなんだろうなと思っていました。

そして、辻本さんにとっても不本意な出来事だったのに違いありませんが、元々のメインスポンサーだったOFTさんが消滅し、ご縁がありスミスに移籍することとなった。自分もまさか辻本さんと一緒に仕事ができるようになるなんて思ってもみませんでした。

これだけ知名度の高いエキスパートアングラーですから、自分としては早々に辻本さんのノウハウを生かした製品作りに取り掛かりたいと思っていました。たまたまOFTさんで開発途中だった案件があり、その開発案件ごとスミスで引き継いだものがありました。それはPKミノー、PKポッパーというメバル用のプラグでした(これは私以外の人が担当しました)。

しかしその後、辻本さんから「こんなものを作りたい」という声がなかなか上がってこない。何か作りたいものはないのですか?と聞くと「僕はまだスミスの中では新米だから・・・」と謙虚な答えが返ってきました。辻本さんは誰に対してもとにかく物腰が低い人で非常に驚きました。知名度のあるアングラーになると、結構上から目線の人も少なくない世界ですから。

そして数年後。痺れを切らして自分の方から辻本さんにリクエストを出しました。「既存の製品をベースにしたようなものではなく、辻本さんが理想とするワームを白紙状態から考えてみて欲しい」と。

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OFTさんから発売されていた「ロッキンホッグ」は辻本さんが手掛けた製品ではあったのですが、私から見ればYUM社のクリーチャーベイトの発展型と言えるものでした。というのも、辻本さんが元々愛用していたYUM社製品が廃番となってしまったのでその代替になるものを、との経緯があったようです。

しかし自分が辻本さんにリクエストしたのは、何かの既製品をベースにするのではなく、辻本さんが白紙状態から考えた理想のグルーパー専用ワームでした。一体どんなモノを理想として考えているんだろう?興味が尽きませんでした。

そして遂に、辻本さんからのデザイン案が私の元に届きました。

(つづく)

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もっと!を叶えるイモグラブ・4 [製品開発]

いよいよイモグラブ90のサンプルが出来上がり、釣果検証を進めていこうという段階で頭を悩ませることがありました。

そもそもこんな大きなサイズのワーム、琵琶湖や池原ダムにでも行かないと結果が出せないのではないか???

しかしながらフィールドテストを依頼する適任者が思い当たりませんでした。JBプロにFeco指定外のワーム(=試合で使えない)のテストを依頼するのも気が引けるし、あいにく琵琶湖や池原ダムをホームにしているテスターもいない。
自分自身はどちらかというとフィネス志向の釣り人なので適任とは言い難いとの自覚もありましたが、自分でやるしかありませんでした。とはいえ遠征している時間もありません。関東のフィールドでテストするしかない。季節は晩秋から冬。果たして結果が出せるのか?1日投げ倒して1バイトあるかどうかじゃないのかな?釣れれば大きいのかもしれないけれど。

結局は自分自身で房総のリザーバーに出向いてテストをすることになったのですが、そこで自分自身の考えが単なる思い込みに過ぎなかったことがわかりました。

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テストの結果、ワームサイズに見合うようなサイズは釣れませんでした。初回のテストでは35cmクラスが3尾。決して見栄えのする釣果ではありません。ですがこの結果に自分自身が一番驚いた。こんなサイズの魚が90mmのイモグラブを喰ってくるんだ!と。それであれば関東のアングラーにもイモグラブ90を自信を持って勧めていける。

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よくよく考えてみたらミノープラグの10cmなんて至って普通のサイズなわけで、イモグラブの90mmもバスにとっては特別大きなものではないのかもしれません。

ここでイモグラブ90の特性に関して少し記しておきます。

【飛び】
7ftロッド+フロロ16lbのタックルで力を入れずに振りかぶってキャストしても40m程度は飛んで行ってしまいます。その気になれば50mを超えてしまう。ですのでリールには16lbを70mは巻きたいところ。50mだとラインブレイクしたりすると足りなくなってしまう恐れがあります。実は自分も、キャストしたら想像以上に飛んでしまい下巻きが見えてしまって焦りました。
最近はベイトリールをシャロースプールに換装している人が多いですが、イモグラブ90をキャストして使うのであれば糸巻量に余裕のあるリールが必要になります。シャロースプールのリールは向きません。

【フォール】
イモグラブ40~60に関しては適合サイズのオフセットフックにセットすることで水平姿勢に、そしてシミーフォール(揺れながら沈んでいく)していきます。ですがイモグラブ90に関してはその特性には当てはまりません。
着水して数秒後には沈下姿勢が尻下がり気味となります。その姿勢も相まってボトムに向かってかなりの速度で沈んでいきます。沈下速度が速すぎることもありシミーフォールはしません。沈下速度に関しては2gのダウンショットリグとさほど変わらないレベル。ノーシンカーの沈下速度としては相当に速いです。

【カバー撃ち】
ファットイカが3/8ozジグの撃ち感だとすれば、イモグラブ90は1/2ozジグの撃ち感だと自分は捉えています。その自重ゆえに複雑なカバーの隙間なども強引に突破していきます。ただ、厚い層となっている浮きゴミを突き破るような攻略は苦手。

【ダートアクション】
トゥイッチさせるとスティックベイトのようなダートアクションを起こします。これはイモグラブ共通の動きです。イモグラブ90に関しては、ボトムに着底させてからダートさせたいという声が多く聞かれていましたが、そのご要望にはお応えできていると思います。

**********

最後にちょっとだけ開発段階での出来事を。

イモグラブ90の開発を進めている段階でのことです。思ってもみなかった大事件が勃発しました。皆さん既にご存知の事と思いますが、ゲーリーヤマモトカスタムベイツ社がGSM Outdoorsという会社の傘下になったというニュースが入ってきたのです。事前情報は全くありませんでした。余談ですが、あのビルルイスルアーズ(ラトルトラップ)も現在ではGSM傘下となっています。

製品開発の窓口となる担当者も変わり、しかもその方は釣りをされないのだとか・・・。下手をすると開発自体が途中で頓挫してしまうのではないかとさえ心配しましたが、何とかそれは免れ、製品化に進むことが出来ました。とにかく様々な折衝や紆余曲折がありました(疲)。何とか無事にイモグラブ90を発売出来、今はホッとしているところです。

関西の方は言うまでもなく、関東のフィールドでも大丈夫です。決してランカーサイズしか釣れないワームではありません。これまで攻め切れなかった場所にも手が届くようになるイモグラブ90。釣りの世界を拡げてくれること間違いなしです。

(おわり)

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もっと!を叶えるイモグラブ・3 [製品開発]

イモグラブはアメリカではTAILLESS GRUBと呼ばれています。尻尾無しグラブということですね。私自身のイモグラブの定義というのは以下のようになります。

1.余計なパーツが付属していないこと
2.断面が真円であること
3.スリットなどを設けていないこと

通常、テールなどが付いていたり、フックスリットが設けられているワームというのはおのずとフックをセットする方向や位置が限られてきます。その場所がボロボロになってしまえば、そのワームはそこで終わり。一方、真円であるイモグラブは左右均等でありさえすればどの方向にフックをセットしても構わない。
残念ながらゲーリーマテリアルの耐久性が低いという点は認めざるを得ない。ましてやヘビータックルでフルキャストするとなればすぐにフックがズレるようになってしまう可能性も出てくる。しかしながら360度どの方向にもフックをセット出来るのであれば刺し直しをすることである程度は保ちが良くなる。だからイモグラブは30~90まで全て真円での設計としているのです。

しかし、真円には1つだけ弱点があります。本体の直径を太くするとフッキングミスが増える ということです。仮に、イモグラブ40をそのままのボディーテーパーで拡大したとします。まず、それにマッチするフックがありません。無理にセットしたとしても魚は掛からない。

それを改善しようとしたら幾つかの策があります。まず、ボディーを若干偏平にして薄くすることです。それでも足りないなと思ったらスリットを設ける。この辺りはモッサやシンクスパイダーのデザインに活かしています。でも、イモグラブにそれはできない。偏平にした時点でそれはもうイモグラブではないから。

自分がワームをデザインする際にまず念頭に置くのはフックをセットした際のバランスになります。このワームならフックサイズはオフセットの#***だな、それをセットすることを考えれば、この部分の直径は太くてもφmmまでだな・・・といった具合です。

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イモグラブ90においては、標準的な形状のオフセットフック#5/0~6/0に適合し、そのフッキング性能を活かすことのできる太さ、ボディーテーパーに設計しています。それ以上のフックサイズとなると一般的ではないし、釣れる魚のサイズも選んでしまう。

イモグラブはサイズが大きくなるほど全体のバランスが長くなる傾向になっています。それはあくまでフックとの適合を最優先してボディーテーパーを設計しているから。
フックサイズ#1のオフセットフックに合うものがイモグラブ40であり、#2/0に合うものがイモグラブ50であり、#3/0に合うものがイモグラブ60であり、#5/0に合うものがイモグラブ90となっています。

(つづく)

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もっと!を叶えるイモグラブ・2 [製品開発]

ゲーリーマテリアルで90mmのイモグラブを作って欲しい。その要望というのは何件かいただいていました。地域的に見ても、ヘビータックルで大型狙いをされているアングラーからの要望だというのはすぐにわかりました。

【Case1】超ロングキャストでこれまで届かなかった場所にまでノーシンカーを投げ込みたいという岸釣りアングラー

なるほど、遠投性能を求めるならばプラグならペンシルベイト、ワームならイモグラブが最強です。余計なパーツがなくて空気抵抗を最も受けない形状が上記の2つだからです。より大きなイモグラブで超ロングキャストをしたいという要望はごもっとも。他の人が投げ入れられない場所まで射程距離に収められるとなると、その区域に居るノープレッシャーのバスを自分のものに出来るわけですからそのメリットは大きい事でしょう。小規模な河川や野池だと対岸まで届いてしまうかも。

【CASE2】ノーシンカーで水深5m以深まで攻略したいというディープを意識したアングラー

これまでもファットイカやイモ60でディープを狙うという人は居ました。でも10g少々のワームですと風や波が出るとキツイだろうなというのはわかります。それがリグ全体で20g近くなってくれればだいぶラクになりますね。

【CASE3】シンカーに頼ることなくワーム単体でカバーの奥まで落としたいというシャローマン

近年はフィールドが土砂の堆積などで浅くなっているケースも多いので、カバーをテキサスリグで撃つにしてもシンカー自体を軽くする傾向が強いです。霞ヶ浦水系なんてもう3/8oz以上を使うケースは聞かなくなってしまいました。昔は普通だったんですけどねぇ。
で、カバーであってもノーシンカーで撃つという発想に繋がります。ファットイカの釣りはまさしくその代表格。でも、カバーの種類によってはファットイカでも水中で宙ぶらりんになってしまってそれ以上に落とせないケースもあります。より重さのあるノーシンカーベイトが求められるというのも理に適った意見です。

様々なスタイルのアングラーがいて、その目的こそバラバラでしたが、いずれも要望内容はラージサイズのイモグラブという点で一致していました。

でもそれらの意見を最初に伺った際、自分は決まってこう返答していました。
「それ、ファットイカじゃ駄目なんですか?」
加えて、具体的なサイズ感も確認してみました。

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すると、ファットイカよりももっと大きくて重いものが欲しい!速く沈めたいor遠くに飛ばしたいのでフラスカートはむしろない方がいいんです・・・なるほど。

具体的なサイズは?90mmくらい。皆さん口を揃えてそのサイズ感を伝えてきました。90mm?!それってデカくないですか?でも最近はルアーも大型化傾向にありますからあまり抵抗のない人も多いみたいですね。

これはビッグバスレイクの人にはいいかもしれない。でも関東のフィールドで90mmのサイズ感はちょっと厳しいのでは・・・。それが一番の懸念材料でもありました。

(つづく)

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もっと!を叶えるイモグラブ [製品開発]

ゲーリー素材であんなワーム、こんなワームを作って欲しい。自分の元にはそんな要望も幾つか寄せられてきます。

塩入のワームは確かに釣れる。その含有率が高いほどよく釣れる。けれども、含有率を高くするほど失われていくものもあります。透明感、プリッとした張り、耐久性等々。だから、ゲーリーマテリアルは決して万能ではありません。

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それはゲーリーヤマモトカスタムベイツ社(現GSM傘下ヤマモトベイツ)が一番よくわかっていて、フラグラブやイカに使われているフラスカートにはあえてノンソルト素材を使っていることからも明らかなのです。フラスカートをソルトイン素材で作ると張りが失われ、独特のフレアーアクションは生まれてこない。

何でもかんでもゲーリーマテリアルで作ればいいというものではないのです。だから私の元に寄せられる数々の要望も、実を言うと的外れに思えるものの方が多いとの印象です。その機能、その形状だったらノンソルトもしくはソルトの含有率を下げた方が良い、と。

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ただ、イモグラブに関しては確実にゲーリーマテリアルが向きます。

以前、北関東某所の管理釣り場に出向いた時のこと。イモグラブで入れ喰い状態になった。イモグラブが着水した瞬間にバスがもんどりうってバイトしてきていました。1キャスト1ヒット状態だった。

オフセットフックで使用していましたがワームの消費量が半端ない。何尾か釣りあげるとイモグラブはボロボロのグズグズになってしまう。自分はセコイので、違う面にフックをセットしたり、しまいには前後逆(!)にフックをセットしたりもしましたが、それでも限界があります。何せこの日、まさかここまでイモグラブを消費するとは思わなかったもので数パックしか持参してきていない。

ここでふと良案を思いついた。手持ちのノンソルトグラブのテールを切ってイモグラブにすればいいじゃないか。これだけ入れ喰いなんだからイモグラブ的なものだったら何だって喰うだろう。

ところがワームを換えた直後からピタリとアタリが途絶えました。フォールスピードをゲーリー素材に近付けようとネイルシンカーを入れてみてもまるで効かない。さっきまでの入れ喰いが嘘のように静まり返ってしまった。

時合いが終わったのか?と思い再度ゲーリーのイモグラブに戻してみる。すると即座に入れ喰い状態が復活した。

ここまでの体験をしたことで、これだけははっきりとした。イモグラブは高濃度ソルトインマテリアルだからこそ釣れるワームなんだと。それ以外の素材で作っても駄目なんだと。

やがて私のもとにまた新たな要望が寄せられてきました。ゲーリーマテリアルで、全長90mmの巨大イモグラブを作って欲しいと。イモグラブである以上、これはもうゲーリーマテリアル以外は考えられないとその意見に同意するほかありませんでした。

(つづく)

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スモール・シンクスパイダー 3 [製品開発]

シンクスパイダーのコンセプトは「狙った場所に確実に落とせる」こと。サブコンセプトとしては「比較的速目に落ちる」ということで、この点が他社製品とは大きく異なるところかと思います。そしてこれらのコンセプトはサイズダウンバージョンの1.6インチでも同様です。

これは今まで自分が散々見えバスを相手に苦渋を舐めてきた経験から来るものです。バス発見!目の前に落とすか、意図的に少し離れた位置に落とすかは人によって違うかもしれませんが、いずれにせよピンポイントを狙ってワームをプレゼンテーションするはずです。

ですが、折角狙った位置にワームを着水させたのにワーム自体が意図しない方向にスライドフォールしてしまってはサイトフィッシングのイライラは増すばかりです。
また、シンクスパイダーは比較的速くフォールすることで、足の速いタイプの見えバスを捉えることを念頭に置いています。岸沿いを遊泳しているバス、そしてその途中で一瞬だけ何かに足を止めるバス、ギリギリ見えるか見えないかという水深に見え隠れするバス。これらを捉えるのにデッドスローフォールするようなワームは効率が悪い。ちんたらとワームが沈んでいる間にバスがどこかに泳ぎ去ってしまったという経験、あるでしょう?自分は山ほどあります(苦笑)。

結果として低比重の虫系で誘いを入れた方が喰うケースは勿論あります。ですので、そうした特性の虫系ワームも必ず常備されておくことをお勧めします。
でも、ストレスなくサイトフィッシングが出来るという点においては私が知る限りではシンクスパイダーに敵うものはありません。イモグラブならば実現できますが、それだと何か足りないと感じる時があるんですよねぇ。


(動画は2.2インチ)

この辺りはおさらいになってしまいますが、シンクスパイダーはワーム自体にセルフレベライザー機能、つまりどんな着水姿勢からであっても、ワーム自身が即座にクルリと翻って水平姿勢に立て直すという特性があります。水槽で実験していただければすぐにわかるのですが、実釣においてはあまり違いがわからないという人もいるかもしれません。何故ならどのような設計であれ、オフセットフックにセットをすればワームは水平姿勢に沈むからです。実際のところ、フックを付けなければ頭から沈んでいくような製品もあります。とはいえ実戦ではフックを付けずに使用するなんてことはあり得ませんからそれでも全然使えてしまう。ですがそれだけ、シンクスパイダーはフォール姿勢の安定性に優れたポテンシャルを有しているということはしっかりと伝えておきたいです。

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多くの方の「欲しい」の声から生まれたシンクスパイダー1.6インチ。皆さん、本当にシビアな状況を打開できるものを欲しているんだなぁと痛感した次第(自分の行くフィールドではここまでサイズダウンさせる必要があまりないので)。でも、その期待に応えられる製品に仕上がっているという自信があります。フィールドテストではギルから小バスまで何でもかんでもバイトしてきてしまって持参したサンプルの消費が早く、中断したこともあるくらい。パフォーマンスベイトシリーズの中でも究極の数釣りベイトに仕上がっています。

4月半ば以降、スミスでの発送業務の状況が想定以上に立て込んでしまったために発売が少々遅れてしまいましたが(申し訳ありません)既にスミスの商品センターには入荷しております。発売ももう間もなくですので、よろしくお願いいたします。

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スモール・シンクスパイダー 2 [製品開発]

私自身の元々の構想ではシンクスパイダーに1.6インチを追加する考えはありませんでした。がまかつ322にも#2より小さなサイズがなく、マッチさせられるフックがあるかどうかという点が気掛かりだったからです。

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ところがこれは杞憂に終わりました。インチフックラージでも、スーペリオLOフック#6でもフッキングには何ら問題がないことが確認できました。少なくともフィールドテスト時においてはスッポ抜けがほとんど起きませんでした。

ですが実はもう1点、シンクスパイダーを小型化するにあたり気掛かりな点がありました。それは脚の強度でした。

ワームというものは魚を釣っていくうちに多かれ少なかれ壊れていきます。中にはすぐにテールが千切れてしまうようなものもある。例えそうであってもいざという場面で頼りになる製品があるのも事実ですが、さすがに1尾釣っただけで毎回駄目になってしまうようでは弱過ぎる。

シンクスパイダーは自重を稼ぐために、工場が設定してある基準を超える割合のソルトを配合しています。そのためマテリアルとしては脆く、あまり脚を細くし過ぎると喰い千切られやすいものでした。2.2インチ開発途中のサンプルの中には、バスを3尾釣るとほぼイモグラブに変貌してしまうものもありました。さすがにそれは弱すぎるということで、特性をスポイルしない範疇で脚の直径を上げたという経緯があります。

でもこれをサイズダウンするとなると脚はそれに合わせて細くしなければならない。そうしないとバランスが悪くなってしまう。そしてマテリアルの比重も変えるつもりはない。それをやったらシンクスパイダーとは別物になってしまうから。

脚を喰い千切られるというケースには2パターンがあります。
1つはブルーギルもしくは20cm未満の小バスに突かれるケース。ブルーギルや小バスはバイト時に脚だけを咥えるケースが多いです。丸呑みできないからそうするしかないのでしょうけど。そして少し間を置くとブルーギルはそのまま脚だけ喰い千切っていってしまいます。ですのでブルブルブルといった明らかにブルーギルのバイトが来たならば、早々に引っ張ってブルーギルからワームを取り上げてしまうのが得策です。

そしてもう1つはバスのバイトで、ワームが口の中に入る。その状態からアワセを入れることでワームが口の中から外に向けて引きずり出される。魚の口は閉じていて、そこから引きずり出される際に脚が引っ掛かり切れてしまうことがある。こればかりはバスを釣っている以上は仕方がないです。

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ケースバイケースではありますが、私が最終サンプルをテストした結果ではバスを3尾程度釣ると脚が1~2本切れているケースが多かったです。そして5~6本釣るとイモに近くなっていました。その程度の強度だと思っていただければ間違いないです。中にはそれでは弱いという人もいるかもしれません。ただ私自身は1本のワームでその程度釣れれば許容範囲かと判断しました。だって今の日本のフィールド、1尾1尾が貴重ですから。

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シンクスパイダー1.6インチで単体での自重は約1.4gです。ゲーリーヤマモトのイモグラブ30が単体で約1.3gなのでほぼ同じ位と言えます。このサイズになると使用するラインはフロロ直結ならば3lb以下でないと扱いづらいです。遠投も出来ません。接近戦やショートディスタンスで繊細な釣りに向いています。釣りの内容としてはテクニカルで難しい部類に入るでしょう。

以前にも記したように、シンクスパイダー1.6インチは私自身が欲したというよりは周囲の要望に応える形で製品化したというのが正しい。言い換えればテクニカルに使うワームを求められていたわけで、それだけ今の時代はハイレベルなアングラーが多くなっているという事の表れなのかもしれません。

(つづく)

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