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2018-10-29 [その他]

タイニークローラー本山バージョン、プロップベイト、ARジグ、ARスピナー、ボトムノックスイマー。

一世を風靡したルアー、その後に多大な影響を及ぼしたルアー、完全に定番化して売れ続けているルアー、これまでになかった新ジャンルのルアー。本山博之さんはそんな名作を次々と発表してきました。

本山さんは霞ヶ浦を舞台としたWBSトーナメントで輝かしい成績を収め続け、「霞の帝王」と呼ばれるまでになった。自分が知る限り、低水温期で掛かりの浅いバスをシャッドで、それもグラスロッドで絡め獲るという釣法は本山さんが生み出したものと記憶しています。この頃にはまだ本山さんとスミスには何も関係が生じておらず、私自身も本山さんとの面識は皆無でした。
ただ、当時土浦新港にて開催されていたオールスタークラシックでは3度の優勝を誇り、その圧倒的な強さは充分過ぎるほどに感じていました。

やがて本山さんは霞ヶ浦のトーナメント活動から桧原湖のガイド活動に活躍の場を移しました。これだけ霞ヶ浦で圧倒的な強さを誇っているのに勿体ない、当時はそう思った人も少なくないはずです。何より、家族を置いて単身で福島に移り住んでしまったのですからその行動力はブッ飛んでいるとさえ思えました。

当時、桧原湖のスモールマウスバスはまだその釣り方が解明されていませんでした。現在では当たり前になった「虫パターン」はタイニークレイジークローラーのチューニングから始まったものですし、ダブルスイッシャーのデッドスロー引きはミロルアーのプロップベイトから生まれたものです。いずれも、桧原湖に移り住んだ本山さんが見出して広く周知させたものです。それらがもたらす圧倒的な釣果は目を見張るほどのものでした。
そしてタイニークレイジークローラーのチューニングモデルを製品化したのをきっかけに、本山さんとスミスとの関係がスタートしました。

ちなみに、スピニングロッドのバットガイドを小口径化させたのも本山さんがルーツです。ノーシンカーのシャッドテールをロングキャストするために本山さんが使い始めたのが、当時のバスアングラーは誰も使わなかった極細PEライン。これをバットガイドで一気に収束させ、あとは直線状に放出させる。これによって遠投性能と飛距離の安定を図ることに成功した。
現在でも販売されているSTS-HM63SSというロッドがそれにあたりますが、発売当初は誰もがそのガイドスペックに目を丸くしたものです。このロッドはスミスのツアラーシリーズの中でもその販売本数はダントツのNo.1です。

やがて本山さんはバスプロから「マルチプロアングラー」へと転身を図ります。バスだけでなくトラウト、ワカサギにもその活動の場を広げていきました。
一般的に、このパターンは成功しません。何故なら、他のジャンルから来た新参者にベテラン面されたところで元々そのジャンルで長年活動してきた人達に快く受け入れられるはずがないからです。特に年齢層が高くベテランの多いネイティブトラウトの世界において、バスの世界から参入してきた人に対しては相当な風当たりがあるのではないか、というのが私が抱いていた懸念でした。

が、本山さんが生み出したトラウトルアーはその圧倒的な釣果の差で広くその実力を認められるようになりました。スピナーというジャンルの中で現在一番売れているARスピナー、それまでになかった特性で今まで獲れなかった魚をも釣れるようにしてしまったボトムノックスイマーがその代表格です。

そして本山さんがバスフィッシングの世界からトラウトの世界に持ち込んだ「渓流ベイトフィネス」もまた近年のトラウトフィッシングを席巻しました。

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私自身も本山さんの釣りを実際に目で見る機会がありましたが、低弾道で次々とスポットを撃ち抜いていく攻撃性の高いそのスタイルは従来の渓流ルアーには全くない概念の釣りと感じられました。まるで手返し良くカバーを撃つバス釣りのようだった。

その本山さんが3年をかけて作り上げてきた渓流ベイトフィネス専用ロッドのハイエンドモデルがようやく完成し、2019年に発売されることになった。カタログ制作を担当する立場の自分としては単にロッドの製品スペックを記載するだけでなく、本山さんがこのロッドを作ることにした背景を伝えたいと考えました。本山さん自身の渓流ベイトフィネススタイルも年々進化しているに違いないと思ったからです。

そこで先日、本山さんにカタログ用の原稿依頼をしました。この依頼自体は快諾してもらいましたが、3日前(10/26)に電話が来た。車が壊れてしまったので色々と大変らしく、提出が少し遅れてしまいそうだとの事でした。
その時に11月初旬でも大丈夫です、と返答をしたのですが、その翌日(10/27)の午後にはちゃんと原稿がメールで届いていました。何だかんだで急いで仕上げてくれたようです。

そして「関連する写真は後日に送ります」とメールに記されていました。

だから、数日後にメールチェックをすれば本山さんからの写真が届いているような気がする。きっと近いうちにまた本山さんから電話が掛かってきそうな気がする。

昨日、本山さんが亡くなったという訃報を未だに現実として受け入れられない自分がいる。

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