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サンプリング釣り大会 [放射能汚染]

来月、とある湖でトラウトの釣り大会が開催されます。その湖の漁協が主催をする。

この湖は依然としてマス類から基準値を超えるセシウムが検出されているため釣った魚をキープして持ち帰ることは出来ません。キャッチ&リリースが前提で釣りが続けられている。でも、キャッチ&リリースでは釣った魚を検量所に持ち込むことが出来ない。そこで今回の大会においては釣った魚は放射性物質調査の検体として全て回収される「サンプリング釣り大会」として開催される。

釣った魚は県の水産試験場及び民間の分析機関に持ち込まれて検査を行い、その結果はHPで公表するとのこと。

確かに、これまでの検査というのはサンプル数が非常に少ない場合があった。1魚種に付きほんの数尾だったというケースも見られるし、検査されていなかった魚種もある。しかし湖の中が均一に汚染されているわけではないし、魚の個体によってもその検出値がまちまちである可能性は高い。そもそもマスの場合は湖に放たれてからどの程度経過した個体なのかによって全然異なる数値が出てくるはずです。少ないサンプル数で判断するのはあまり好ましいことではない。だから、釣り人の協力を仰ぎより精度の高い放射性物質の検査を行うということは非常に意義があると言えます。

けれども、ちょっとした違和感を覚えずにはいられなかったことがある。昨日、各釣り具メーカーに配布されたであろう大会の協賛依頼の書面が私のところに回ってきました。主催者が作成したであろうその文面には「放射性物質の濃縮を防ぐ目的」と明記されていました。つまり、放射能汚染された魚を湖から除去することで湖の除染を進めたいとする意図がある。

さらに、協賛依頼に同封されてきた新聞記事のコピーにはこのように記されていました。
漁協は汚染魚を減らすと共に、食物連鎖による大型魚への放射性物質の濃縮を防ぐ目的などで、湖の再生に向けた「サンプリング釣り大会」の開催を決めた。


湖の除染を進めたいというのは誰しもの願いであるし、ましてや漁協としては切実な願いであるのに違いありません。でも、果たして湖の魚を除去していくことが除染になるんだろうか?基本的に1年魚であるはずのワカサギだって、世代交代を繰り返しても相変わらず汚染されたままの湖がある。だから、湖底や周辺土壌が汚染されている限り、大した効果は見込めないんじゃないかと私は思うのだが・・・

そして、同湖の魚をキャッチ&リリースで大切に扱ってきたルアー・フライマンの思いはここでその意味を無くしてしまうのか?

そもそも、漁協はこれまで湖を魚の豊富な水域にしようという思いで管理や放流を行ってきたものと思う。折角自分達の努力によって湖に生息するようになった魚達を、今度は自分達の判断で湖から取り除いていかねばならない。これは漁協の本意でなく、断腸の思いなのではないか。

そんな色々な違和感を感じつつも、自分は主催者側を責める気には到底なれない。地元や漁協は原発事故の被害者以外の何者でもない。魚を除去なんてしなくても他にもっと効果的に除染できる方法があったのならとっくにそれを行っているだろう。その一方で、世の中をぶち壊した本当の黒幕は、おおよそ自分達が加害者だなんていう自覚すら持ってはいないだろう。これは本来、加害者が何とかすべき問題だ。

ただ、魚を取り除く=湖の除染というイメージは世の中に植えつけて欲しくないと切に願う。そこは根本的な部分が間違っている気がする。

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カッシー

これからどうなるか、どうするか、何年かかる問題なのか、不安要素ばかりだからこういった考えの大会も必要なのでしょうが、主催する漁協の方々は複雑な思いの大会となってしまうのでしょうね。
by カッシー (2013-05-15 23:20) 

IKE-P

湖の内水面漁協の苦労が垣間見えるような気がしますね。

抜本的な解決策がない上に、結局は地元で何とかしなければいけないという理不尽さ。

一刻も早く汚染が収束することを願うしかありません。
by IKE-P (2013-05-16 23:42) 

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