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淡水魚の放射能・2 [放射能汚染]

日曜日の昼前、待ちわびていた書籍が自宅に届けられました。「淡水魚の放射能」水口憲哉著/フライの雑誌社刊 恥ずかしながら、本をネットで買ったのはこれが初めてです。この本が出版されていなかったら、ネットで本を注文することなく人生を終えていたかもしれません。

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このブログではこれまでも定期的に魚類の放射能汚染の実態や、霞ヶ浦水系を中心とした釣り場の汚染についても取り上げてきました。ですので日頃このブログをご覧になっている方ならば、私が魚類の放射能汚染についてどのように考えているのかはおおよその察しがつくことと思います。

しかし私は放射能汚染の専門家ではありません。自分なりに色々と調べたりもしてきましたが、所詮は専門家が発信する情報をもとにした自分自身の解釈に過ぎないのかもしれません。でもだからこそ、今でもあらゆる情報が欲しいと思っています。

人間というものは非常にご都合主義なところがあって、自分が信じる事柄に都合が良い情報ばかりを選択してその思考回路を一層強固なものにしてしまう傾向があります。例えばバスの害魚問題の時もそうです。

バスが小魚を食べ尽くす、と主張する人達は規模の小さな水域での実例を挙げてきたり、水槽に入れたバスに小魚を与えて食べさせてみたり、バスの胃袋に小魚が入っている事例を挙げてきます。一方、バスが生態系に組み込まれてバランスが保たれるようになると主張する側は比較的規模の大きい水域を実例に挙げ、バスの歴史の古い水域でも多くの小魚やエビなどが生息する現状を伝えようとします。互いに都合の良い実例ばかりを挙げて主張しあうわけですから、その妥協点が見出せるはずがありません。

但し、バスの場合はまだマシかもしれない。水域に出向けば、事実はちゃんとそこにある。その点、放射能は実に厄介です。見えない、臭わない、味もしない。その存在を全く感じることがない。放射能汚染なんて大したことない、と主張する人達はもしかしたら心のどこかで、その実感が沸いていないのかもしれない。ではこれがもし可視できるものだったらどうでしょう?仮に、放射性物質で汚染されたものが赤く変色するとしたら。
  • 公園の植え込みの一部にちょっと地面が赤っぽいところがあるから行政にお願いして除染してもらおうか
  • 河川敷の土がだんだん赤みを増してきた。付近に近づくのは止めておこう
  • この魚、開いてみたら身が赤っぽい!これは食べたらヤバそうだ

放射性物質が可視できたなら、きっと世論も大きく違っていたと思う。でも現実にはその存在は全く感じ取ることが出来ない。高い測定値が検出されている地点に立ったところで何も感じ取ることはできないだろうし、もし汚染された食材を口にしてしまったとしてもこれまでと全く変わらぬ味と食感しか感じられないでしょう。

しかし現実には、自然界、生物、そして食品となりうるものにさえも放射能が撒かれてしまった。残念ながら悪夢ではなく、これは現実です。

「大丈夫、問題ない」と言う人達がいる。行政や専門家の人も大概そう言う。しかし、行政や加害者企業は事故後に国民を裏切っています。重要な事実を隠蔽し、ホトボリが冷めてから公表した。誠意のかけらすらも感じられない。確かに、彼らの言うことに従い、楽観的に物事を捉えるのが気楽でいいのかもしれない。でも自分は、彼らをもう信じないことにした。

「淡水魚の放射能」を一通り読みました。私もチェルノブイリ事故後の魚類への影響というのは調べていましたが、さほど深い知識を得るには至っていませんでした。この書籍においては、各国の魚類の放射能汚染に関して広い範囲で記されています。特にチェルノブイリ原発事故の影響を直接受けたウクライナ、その風下だったベラルーシの事例は福島、そして関東とオーバーラップする部分があります。人的被害、魚類やミミズなどに発症した異変など、目を背けてはいけない事例が記されています。

もちろん、福島原発事故以降の国内の淡水魚に関しても様々な考察がなされており、傾向や今後の推移予想などもされています。これに関しては私のように定期的に各地の魚類のセシウム検出値を注視している者にとっては情報としてさほど新鮮味は感じませんでしたが、現在の国内内水面の淡水魚の汚染状況を把握していない方が現状を知るにはうまくまとめてあると思います。

さて、結論として汚染された淡水魚が危険とされるボーダーラインはどの程度なのでしょうか?国が定める100Bq/kg?私の見解は「わからない」です。でも、わからないからどうでもいいやではなくて、わからないから少なくとも5年は用心した方がいいのではと思っています。

他人には強制しませんが自分の中ではそう決めています。

では、「淡水魚の放射能」ではどのように結論付けているのか?この本の中にもその結論はありません。但し、以下の記載が著者の見解を表していると言えるのではないかと思います。
  • 淡水魚の調査がほとんど見られないベラルーシやウクライナで、政府が規制するにもかかわらず、子供たちの内部被爆の症例が次々と報告されることに、私たちはもっと気が付かなければならない。
  • 海水魚について食品の放射能汚染完全対策マニュアルをまとめた中で考え抜いた末に、”子供には1回の食事で1ベクレルたりとも放射能を含む魚を食べさせない方が良いのではないか”という結論に達し・・・

でもこれも、一人の専門家の意見です。最後に判断するのは、自分自身です。判断材料は、なるべく多く持っていた方が自信を持った判断に繋がることと思います。

104ページ、そんなに分厚い本ではありません。テーマは重いですが読み切れる本だと思います。

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