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いざ、陸前高田へ。2 [東日本大震災]

ご注意:以下の内容には遺体、遺骨という言葉が多数出てきます。気分を悪くされる方はこの先を読まないようにして下さい。

震災以降、これまで何箇所かの被災地を見てきました。被災者の方とも多く接してきた。そうした中で自分が感じてきたものの1つとして、やっぱり家族を失った人が最も辛い思いをしているのではないかということ、特に未だに家族が行方不明のままでいる遺族の人が震災以降に気持ちの切り替えが出来ず塞ぎ込んでしまっているケースが多いということでした。

何とかしてあげたいと誰もが思う。でも、寄付や同情で何とかなるようなものでもない。考えるまでもなく答えは1つしかないはずです。行方不明になったままの家族を見つけ出して、遺族の元に返すこと。

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今回、僅かな可能性に賭けて陸前高田市の古川沼で行われている行方不明者捜索に加わってきました。2日間、土砂の中をひたすら掘り返し、瓦礫を拾い集めその中に何か手掛かりがないかを探し続けた。結果、自分は行方不明者を見つけ出すことは出来ませんでした。

とにかく、悔しいの一言に尽きる。けれども、何もしないでいるよりは良かったと思っています。後悔の気持ちはない。

9/20(金)、仕事を終えて帰宅。食事と入浴を済ませて現地に向かいました。夜通しのロングドライブとなるので目が冴えているうちになるべく走り、眠くなったら適時休憩を挟みながら現地に向かうようにしました。

陸前高田には8時頃到着しましたが、その風景に唖然としました。こんなことを書いたら地元の方に怒られそうですが、海沿いの街は壊滅したままの状態としか思えませんでした。だだっ広い新地と化した場所が広がり、津波により破壊された建造物はそのまま残っていました。海沿いはことごとく復旧工事中で多数のダンプカーや重機が行き来していました。他の地域と比べても突出して復興が遅れていると思いました。

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復興サポートセンターでの受付まではまだ時間があったので奇跡の1本松に立ち寄りました。元々は高田松原という70000本もの防潮林が広がっていたこの地域も現在は周囲は何も無い新地、あるのは津波に破壊された建物の残骸のみ。この周辺は基本的には復旧工事により立入禁止区域なのですが、奇跡の1本松に向かう通路のみ一般の人でも通れるようになっていました。ただ、それ以外は本当に何も無い。

復興サポートステーションには多数のボランティアが続々と集まってきました。その数おおよそ150名。その多くは大型バスでやってくる団体ボランティアで、神奈川からやってきている団体もありました。少林寺拳法の団体や、学生の団体もいました。私のように個人で来ている人は数えるほどしかいませんでしたが、同じ埼玉県から来ている人達がいたのは嬉しかったです。

全てのボランティアが古川沼での遺体捜索にあたるわけではなく、漁業支援や施設、イベントの支援などに回るグループもあります。それらは事前の申し込み時に希望を伝えておくのですが、人数調整の関係で必ずしも希望の活動に加わることが出来るとは限りません。マッチングの結果、自分は当初の希望通りに古川沼での遺体捜索に加わることが出来ました。

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現在防潮堤の建設工事が進んでいる古川沼は、原則として工事関係者以外は立入禁止区域です。遺体捜索は立入禁止区域内での作業となります。主催者側から真っ先に要望されたことは、絶対に怪我や事故を起こさないで欲しいということでした。

立入禁止区域内でボランティアが怪我をしたとなると、その責任は立入禁止区域内でのボランティア活動を許可した岩手県と工事業者にも向けられてしまいます。どうして立入禁止区域内にボランティアを入れたりしたんだ、となる。そうなると、行方不明者捜索活動が出来なくなり、遺族の方々の望みが絶たれてしまう。さらには防潮堤工事さえも止められてしまう可能性が高くなる。
「良い事をしているのだから堂々とやれるだろう」と思うのは間違いなのです。工事現場に特別に立ち入らせてもらい、作業させてもらっている、というのが最も相応しい表現かもしれません。


作業の現場はほぼ海岸線付近になります。現場での最初の指示は避難経路に関する指示でした。大きな地震が来たら丘の方へ走って逃げること、その際には車は捨てて逃げて下さいとの指示がありました。「地震が起きてから津波が来るまではおおよそ20分。走れば絶対に逃げ切れます」と言った担当者の方は実際に大津波から走って逃げた経験者でした。

現在は現場の工事関係者も非常に協力的なようで、埋め立て予定地の湖底の土砂を重機で採取し、ボランティアが活動しやすい場所へと運んできてくれていました。私達はその土砂の中から遺骨や遺留品を探し出していくことになります。けれども自分はその捜索方法に驚きました。そこまで手間をかけるのかというほど丁寧に行うのです。

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(非営利特定活動法人P@CT様のフェイスブックより)

丁寧なのは悪いことではありませんがあまりにも効率が悪すぎるのではないかと思いました。なぜなら工事関係者が採取して運んできてくれた土砂が100トン。しかしボランティアが1日で消化できる土砂はおおよそ100~500kg程度です。ちなみに工事関係者が運んできてくれた100トンというのも湖底の一部の土砂に過ぎません。捜索活動の規模も考慮して遠慮した量を持ち込んできたようです。何せ約300m×2kmの面積の沼だったわけですから。

それでも丁寧な捜索を行うのには理由がありました。まず、現状発見される遺骨の一部というのは非常に小さいこと。さらに色も黒ずんでおり、石や木片との見分けが付きにくい(実際に発見された遺骨の写真を見せてもらいました)。まずは大きな瓦礫や木片を土砂から撤去し、最終的には土砂をふるいにかける。これで小さな石や木片などもほぼ摘出することが出来ます。遺骨の一部や遺留品なども摘出することが出来る。

古川沼はこれまでも全く捜索されなかったわけではありませんでした。警察による捜索が行われたこともある。しかしそれらの捜索方法では遺族の方が納得できなかったのです。確かに湖底を棒で突付くだけの捜索方法で遺骨が見付かるとは自分も思いません。震災直後であればまだしも現在は遺骨も小さく、バラバラになっている。まして土砂の中には大量の瓦礫や石が含まれており、その中から遺骨を摘出することは不可能です。今回行われている捜索内容は遺族の方にも納得してもらえる精度の捜索だと思います。

捜索中、私も骨の一部ではないかと思えるものを発見しました。現場スタッフの方が水で洗浄して見てくれましたがどうやらそれは「竹の一部」のようでした。土砂の中からは、そうした紛らわしいものが沢山出てきます。一応は見分け方も教わりましたが、パッと見の区別は普通の人には難しいレベルと思いました。震災から2年半が経過した遺体捜索はそこまで難しいレベルになってきているのです。

また、スタッフの方からミーティングの際にお願いされていた事があります。ツイッターやフェイスブック、ブログなどで活動報告をするのは良いのですが、決して「遺骨を見付けた」という断定的な表現はしないようにと言われました。実際、パッと見には骨のように見えても、警察でDNA鑑定をしてみたらそうではなかったということも多いそうです。

現実にあった話で、ボランティアの方が「遺骨を発見した」とネット上に書いてしまったそうなのですが、警察での鑑定結果は骨ではなかったそうです。しかしネット上で「遺骨発見」と書いてしまったためそれを見た遺族が警察や県等に問い合わせを入れてしまった。こうなると遺骨が出てきているのに遺族に何も連絡がないということで警察や県の対応が悪いということにもなりかねません。ボランティアやその主宰団体が発することの出来る情報はあくまで「骨のようなものが出てきた」までがその範疇なのです。それ以上の断定をすることは出来ません。

この日は猛烈な暑さの中での作業となりました。現場には一切の日陰もありません。随時休憩を挟みながらの作業となりましたので熱中症などにかかる人はいませんでしたが、9月下旬でこの暑さ、8月に作業した人達はさぞや過酷な状況だったのではないかと思いました。

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(非営利特定活動法人P@CT様のフェイスブックより)

この日、数人掛かりで小さく盛られた土砂を掘り返しましたが収穫は得られませんでした。作業に取り掛かる際には小さな山だと思いましたがスコップを入れると大量の瓦礫が含まれており、それを石、コンクリート、木材、レンガ、その他と分別するのも大変な作業で、目の前の小さな山でさえも完遂させることは出来ませんでした。遠めに見える100トンの土砂は途方もなく大きい山に思えました。

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その晩は二又復興交流センターに宿泊。ここは廃校となった矢作小学校の校舎を簡易宿泊場として改装したもので、今年の1月に出来上がったばかりです。ホテルではないので非常に簡素な宿泊施設ですが部屋や布団、お風呂なども真新しくて非常に綺麗でした。小学校の校舎に入るなんて何年ぶりだろう。周りは山に囲まれた校舎、目の前にはイワナでも釣れそうな渓流も流れています。ふと、どうして自分はこんな山奥の小学校の校舎の中に居るんだろう?と不思議な気分になりました。

長時間の運転と睡眠不足と肉体労働で体は疲労しきっているはずなのに、何も見付けられなかった悔しさでなかなか寝付けませんでした。明日こそはという気持ちと、この日のうちに実感してしまった捜索の難しさ。でもやるしかない、それだけでした。

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