SSブログ

丸い小石の物語・4 [スミスルアー]

ペブルSRの開発・生産ラインは、それまでスミスが確立していた生産ラインとは全く別の新規取引先の工場でした。これはある意味リスキーな選択でしたが、ペブルSRの価格を抑えるために取った方策でもありました。手頃な価格のシャロークランクを作って欲しいというのがそもそもの要望内容の1つでもありましたし、私自身も¥1500を超えるような製品にはしたくなかった。

具体的に言ってしまうと、生産を部分的に中国で行う事によってその製品価格を抑えようという試みでした。但し、当時はまだ中国生産のルアーというのは信頼性が今ひとつというのが現実でした。精度という面において、日本製にはかなわないレベルでした(現在ではかなり進歩しています)。

そこで、金型製作とABSの成型に関しては日本で行い、成型後のバリ取り研磨、塗装、組み立てという工程のみを中国で行うことにしました。その結果、価格を¥1200まで下げる見通しを立てる事が出来たのです。もしも販売価格が¥1500を超えてしまうようだったなら、私はペブルSRの開発を中断していたことと思います。ルアーという消耗品に¥1500というのは高過ぎる。現実的には理想通りにいかないケースも多々ありますが、少なくとも自分が開発を手掛けるものがそうであってはならないとの思いが、私は人一倍強かったからです。勿論、もっと安くするに越したことはないのですが、品質を維持した状態で価格を抑えるとなるとこれが限界でした。

また、このような工程にした理由はもう1つあり、ペブルSRの金型を中国に置きたくなかったという点が挙げられます。コピー品が出回るのを恐れていたからです。ですので、ペブルSRの金型は現在でも日本に置き、日本で成型をしています。

何はともあれ、コンセプトの1つでもあった手頃な価格という面は何とかクリアーする目処が立ったのでした。しかし、新規の製造工場とのタッグは従来の生産ラインとは勝手が違い、スミスサイドの開発手順と工場側の開発手順に違いがあったことなどから、なかなか思うようには進んで行きませんでした。ましてや、私自身も1から開発に着手するのは初めてでしたし、実は製造工場の担当者も経験の浅い若手スタッフでした。

だから、ペブルSRの開発というのはその道の熟練者というのが関わっていませんでした。経験の浅い者同士が、あれこれと壁にぶつかりながら生み出していったものと言えるのです。反面、それゆえに理想に向かって一直線に進むことが出来た。経験の浅さゆえに、妥協策すらあまり知らなかったからです。

090827-1.jpg090827-2.jpg

果たして、本当に理想通りのものは出来るのだろうか?私がCADで描いた図面とは全く違う寸法で出来上がってきたファーストサンプルを見て、その不安はますます募るのでした。

(つづく)

gill-banner.jpg
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。