SSブログ

北浦シーバスフィーバーの謎に迫る [その他]

北浦を始めとした霞ヶ浦水系でシーバスが良く釣れるようになりました。
厳密にいえば北浦でシーバスが釣れた実績というのは昔から皆無というわけではありませんでした。ごく稀に、釣れることはあった。ただ、レアケースの範疇でした。

それが近年ではバスよりもよほどシーバスの方が釣れるようになった。中には二桁釣ったなんていう人もいます。

210424-2.jpg

さて、この北浦でのシーバスフィーバー。一体なぜ?この先も釣れ続くのか?をデータから考察してみたいと思います。あくまで私個人の考察なので外れてもあしからず。

ではまず、なぜここまでシーバスが霞ヶ浦水系内に遡上をしてきたのでしょうか。霞ヶ浦が汽水化してきている?常陸川水門の開閉が増えたから?その真相を探るべく、常陸利根川にある「息栖」観測所の水質データ、常陸川水門の開閉実績を調べてみました。

【霞ヶ浦水系は汽水化してきている?】

まず申し上げておきたいのは、霞ヶ浦水系の汽水化は「あり得ない」ということです。
そもそも常陸利根川の水は近隣の農業用に取水されており、塩化物イオン濃度が上昇すれば大変な事になります(2014年に1度、塩化物イオン濃度が上がったため取水を停止した実例があります)。常陸川水門の役割自体が塩害を防ぐためのものですし、各水質観測所では常時水質をチェックされています。常陸利根川はじめ霞ヶ浦が汽水化するということはあり得ません。

以下は息栖観測所の塩化物イオン濃度の測定値平均です。年号は任意にピックアップしたものです。

1998年 82.4(mg/l)
2001年 84.95
2006年 65.4
2008年 63.3
2011年 76.99(4月に201mg/lを記録、震災による何らかの影響と考えられる)
2015年 67.66
2017年 73.58
2018年 87.6(12月に200mg/lを記録)
2019年 74.8(2月に340mg/lを記録。なお2019年秋の台風による影響は(塩分濃度に関しては)見られない)
2020年 52(1~4月までしかデータが出ていない)

この数値を見る限り、常陸利根川の塩化物イオン濃度に上昇傾向は見られません。むしろ1998年や2001年の方が高かったくらいです。また2010年には常陸川水門の魚道が稼働を始めていますが、これによる影響も全く見られません。

ですので、霞ヶ浦水系で汽水化が進行しているというのは間違いです。常陸利根川は紛れもない「淡水」です。

参考までに、汽水湖とされる涸沼に関しては塩化物イオン濃度が下層で2~8g/l(2000~8000mg/l)となっており、常陸利根川はそれには遠く及んでいないという事がわかります。

【常陸川水門が開いている時間が長くなった?】

過去の常陸川水門の開閉回数・開閉時間に関しては資料があります。

211128-2.jpg

水門開放時間で比べて見ましょう。西暦に変換して掲載します。
2010年 812時間40分
2011年 819時間10分
2017年 514時間45分
2018年 343時間35分
2019年 733時間30分
2020年 601時間15分

関東に2回の台風上陸があった2019年は幾分開放時間が長かった形跡がありますが、それとて2010年や2011年に比べれば長くはありません。ですので近年水門の開放時間が長くなっているというのは間違いです。また開放時間の長かった2010~2011年の後、北浦でシーバスが良く釣れたという話は聞きませんので単純に水門の開放時間が長ければシーバスが多く遡上するというわけではなさそうです。

しかしながら、シーバスが北浦で良く釣れ始めた時期を考慮すると2019年の台風後の水門開放が関係している可能性は確かにあります。この時、まずは利根川の河口堰を全開放流で開け利根川の水位を下げました。そしてそののちに常陸川水門を開けました(この順番を守らないと、常陸利根川に海水が逆流します)。
このため淡水域を目指して利根川下流部に入り込んでいたシーバスの群れが利根川からの濁流を避け、常陸利根川下流域に退避することは充分考えられます。続いて常陸川水門が開くことにより常陸利根川河川内に入り込んでくることはあり得ます。実際、堰の下流部でシーバスを狙っている人の話でも、利根川側は全然ダメだったのに常陸利根川側で爆釣だったことがある、という話を聞いています。

【常陸川水門に隙間がある?!】

211128-4.jpg

昨年、常陸川水門付近に行った方ならばご存知かと思いますが、常陸川水門では大掛かりな工事が行われていました。

211128-1.jpg

常陸川水門、実は昭和38年に竣工された非常に古い施設です。平成21年(2009)度の点検においては複数箇所で漏水が確認されていました。そして平成24年の夏季には常陸利根川の塩分濃度が異常に上がり、取水が出来なくなるという事態に陥っています。そのため、常陸川水門の隙間を埋めるための工事が行われていたというわけです。

211128-3.jpg

その後、2018年12月から2019年2月にかけて常陸利根川では塩化物イオン濃度が異常に高くなっています。つまりこの2ヶ月間、常陸利根川には大量の海水が漏れ出ていたということになります。

関東を2度の台風が上陸し甚大な被害が出たのは2019年の秋です。この際の常陸川水門の開閉によって大量のシーバスが遡上してきたという見方もあり私もそれを否定しません。ですが実はそれよりも前、2019年の春から北浦で複数のシーバスを釣り上げた人がいるのも確かです。
2019年の春に北浦で釣れていたシーバスは2018年12月~2019年2月にかけての常陸川水門の工事中に発生した海水の逆流に乗じて遡上してきた群れではないかな?というのが私の見解です。

(つづく)

gill-yahoo-sinkspider.png
nice!(3)  コメント(2) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 3

コメント 2

ひろ

私地元で釣りをしていて思うんですが、今年は小さいボラ?の群れがめちゃくちゃ多くて、小河川だと満月の日に水面が全部ボラで埋まってたんですよ。シーバスはその匂いみたいなものを感じることができて、ボラの当たり年だからいっぱい遡上してきたのかなと思っています。
ボラが増えたのは、日照時間か、降雨量か、温暖化なのかわかりませんが、プランクトンが増えたせいかと思っています。全部根拠なしの推測です笑
by ひろ (2021-11-30 07:22) 

IKE-P

シーバスはバス以上にベイトフィッシュに依存して行動していると思いますので、説得力のある話ですね。

ボラの幼魚程度であれば魚道での遡上もあると思いますので、河川内でハクが増えたのはその影響かもしれないです。魚探で見ても、かなり規模の大きなボラの群れが映ることがあります。
by IKE-P (2021-11-30 23:36) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。