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水を掻くネズミ [スミスルアー]

3日前の記事に引き続き、これもまた私が現在の開発セクションに入る以前に社内提案したことから製品化となった商品です。

それは、ハトリーズ「ラウドラット」。

えっ、トーナメンターだったくせにトップウォータープラグなんて社内提案していたのか?と言われてしまいそうですが、実はそうなのです。これはスミスでなければ製品化できないルアーだろうと思いました。

ラウドラットは、ノイジータイプのトップウォータープラグ。ただ巻きしてくると、身をくねらせながら泳いできます。ロングキャストして引いてくると、ルアーの航跡はまるで小さなヘビが水面を泳いでいるような、そんな印象を受けます。

当時、いや、今でもそうかもしれませんがノイジータイプのトップウォータープラグといったらジッターバグにクレイジークローラー。そのいずれも付属の金属パーツによりクロールアクションを起こしています。しかしそれゆえに、金属パーツの開閉度合いによって泳ぎが影響されてしまったり、引いてくる際のロッドの立て具合がシビアであったり、飛行姿勢にもマイナス要素を生んでしまっていました。

私が理想としたのは、金属パーツに頼らず、ボディーデザインだけでクロールアクションを生み出すプラグでした。こんなものは出来ないか?とイメージイラストを付して企画書を提出したのを覚えています。

しかし、この企画は意外にもすんなりと通ったのです。というのも、担当者がこの話を羽鳥静夫さんに伝えたところ、「前に作った、こんなプラグがあるんだけど」と、その場でベースサンプルを渡されたというのです。何でも、いつかこんな要望が出される日が来るのではないかと思って、大事に温存していたというのです。この話を聞いた時は本当にびっくりしました。

開発担当者によると、開発を進めるにあたり、その形状の複雑さゆえ金型製作は困難を極めたそうですが、その出来栄えには私も満足しました。

そして、ここからは企画提案者の私ですら想像できなかった部分ですが、このプラグはただ引きで単なるクロールアクションをするだけでなく、驚くべき機能が2つ備わっていました。
1つは、ロッドの立て角度に関係なくクロールアクションを起こすこと。これは、ジッターバグやクレイジークロウラーでは真似の出来ないことです。極端な話、ロッドを水中に突っ込んでプラグを水中に突っ込んでみてもクロールアクションを引き起こす。
そしてもう1つは、ペンシルベイトのようなスキーイングアクションをも起こすことが出来る点でした。

さすがハトリーズ、さすが羽鳥静夫さん。ここまで多彩な機能を有したプラグが出来上がってくるなんて。ラウドラットはもはや私が当初提案した要望内容をはるかに超えるものとなっていました。

ところがこのルアーも現在ではカタログ落ち。トップウォータープラグの場合は、発売時にはそれなりに売れても、それを持続させることが難しい。一度買った人は買い足すことはないでしょうし、潜るルアーではないから滅多にロストもしない。だから、再生産を続けることが出来なかった。プラスチック量産型のトップウォータープラグを作るということは、そうした難しさがあるのです。

しかし、このラウドラットの泳ぎをするルアーは未だに他にはありません。おそらく、よほどのルアーデザイナーでない限り、このプラグを超えることは出来ないものと確信します。


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